PVsyst 日本語訳で学ぶ太陽光発電シミュレーション入門編
By LRTK Team (Lefixea Inc.)
太陽光発電所の設計において、発電量のシミュレーションと影(シャドウ)の評価は欠かせない要素だ。本記事では、世界的に利用されているシミュレーションソフト PVsyst の概要と基本操作を、日本語訳を交えて解説する。特に日照シミュレーションにおける「影」の重要性に着目し、PVsystでの地平線や近接物による影の設定方法を紹介する。また、通常の設計業務で課題となりがちな影データ(地形・障害物情報)の不足をどう克服するかについて、LRTK と呼ばれる点群スキャン・AR技術を用いた最新手法を取り上げる。山林や電柱、建物、擁壁など様々なケースでの影響例に触れつつ、記事の最後ではこのLRTK活用のメリットに触れ、太陽光発電所設計への新たなアプローチとして提案する。
1. PVsystの概要と基本操作(日本語UIと主要用語)
PVsyst(ピー ブイ シスト) は、太陽光発電システムの年間発電量を予測できるソフトウェアである。元々は英語版のソフトだが、本記事では主要な画面項目や用語を日本語に訳しながらその使い方を説明する。PVsystを使うと、発電所の設置場所や設備仕様を入力することで、太陽光発電の期待発電量を詳細に計算できる。
基本的な操作手順は次のようになる。まずプロジェクト の作成では、シミュレーション対象のプロジェクト名を設定し、所在地(緯度・経度)と気象データを選択する。PVsystには世界各地の気象データが用意されており、例えばMeteonormやSolarGIS、日本国内であればNEDOの日射データなどを選んで日射量(年間の水平面日射量など)を取得できる。ここで入力する場所と気象データが、その後の発電量計算の基礎となる。
次にシステム構成の設定を行う。これは発電システムの規模や機器構成を定義するステップだ。具体的には、使用する太陽光パネル(モジュール)とパワーコンディショナ(インバータ)をデータベースから選択し、パネルの枚数や直列・並列接続数、インバータ台数などを入力する。PVsystは豊富な機器データベースを備えており、メーカーや型番を指定することでパネルの定格出力や変換効率、温度特性など必要な値が自動入力される。インバータについても定格容量や効率が反映され、これらによってシステム全体の基本性能が決まる。
続いて配置と方位角の設定だ。パネルをどの向き(方位角)・傾斜角で設置するか、あるいは追尾式にするかを指定する。例えば固定架台で南向き、傾斜角30度といった設定や、水平単軸追尾の場合の軸方位・範囲を設定する。日本で一般的な南向き固定設置なら「方位角0°(真南向き)、傾斜角10°~30°程度」などの値を入力することになる。正確な設置角度の設定は年間発電量に大きく影響するため、実際の設計条件に合わせてここで調整する。
PVsystではさらに詳細な損失パラメータの設定も可能だ。これは発電量に影響を及ぼす様々な要因を数値化するものである。例えばパネル表面の汚れによるロス(汚れ損失)、配線での抵抗ロス(配線損失)、温度上昇による効率低下、インバータの夜間自己消費、変圧器損失など、多岐にわたる要因を入力できる。経験的に見積もった値や設計上の仕様値を入力することで、理想状態からの発電ロスを一つ一つ考慮に入れる仕組みだ。これらの入力値は最終的なシミュレーション結果レポートで「損失の内訳」として一覧表示され、どの要因で何%の発電量が損失するかが示される。
以上の設 定が済んだら、シミュレーション実行を指示する。PVsystは1年分の気象データを用いて時間ごとの発電量を計算し、年間エネルギー収支をまとめる。結果として、年間総発電量(kWh)、月別発電量、パフォーマンスレシオ (PR値) といった主要指標が得られる。PR値とは理想条件下で発電できるはずのエネルギーに対し、実際どれだけ発電できたかを示す割合であり、システムの総合的な効率指標である。またレポートには、先述の各種損失が積み上げ棒グラフ等で示され、たとえば「配線抵抗で○%減、温度上昇で○%減、影の影響で○%減…」といった形で視覚的に確認できる。PVsystの画面UI自体はいまだ英語表記が中心だが、このように日本語訳を交えれば、非英語圏の技術者でもシミュレーション結果の内容を理解しやすくなるだろう。
2. 日照シミュレーションにおける影の重要性とPVsystでの影設定機能
太陽光発電において影(シャドウ)は発電量を左右する極めて重要な要因である。パネルの一部でも直射日光が遮られると発電出力が大きく低下することがあり、たとえ小さな影でも無視できない影響を及ぼす。例えばパネル1枚に電柱の影が細くかかっただけでも 、そのパネル列(ストリング)全体の電流が制限されて発電損失が生じることがある。したがって、信頼できる発電シミュレーションを行うには、周囲環境による日射遮蔽を正確にモデル化することが不可欠だ。
PVsystには、この影の影響を取り込むための専用機能が用意されている。大きく分けて「遠方の影(地平線)」と「近接物の影(近接影)」の二種類を設定できるようになっている。遠方の影とは、発電所から見た地平線上の障害物による日射遮蔽のことである。典型的には周囲の山並みや高台、森林の稜線、あるいは遠方の高層建築物などが該当する。これら遠方の遮蔽物は太陽高度の低い時間帯(例えば日の出直後や日没前、冬季の低太陽高度時)に太陽光を遮り、直達日射の取得時間を短くする要因となる。PVsystではこの遠方遮蔽を「地平線プロファイル」として定義することができる。ユーザーは各方位角ごとの地平線高度角を入力することで、周囲360°の地平線形状をソフト上に再現できる。例えば真東から南にかけて山が迫っている場合、その方向の地平線高度を10°や20°と設定する。するとシミュレーション計算では太陽がその角度より低い位置にある時間帯は直射日光が届かないものとみなし、該当時間の発電量を差し引く仕組みだ。地平線データは現地測定や地形図から 得られるが、PVsyst内蔵の簡易エディタで地形をスケッチしたり、他ソースから数値データをインポートしたりして設定可能である。
一方、発電所のごく近くに存在する物体による影は「近接影」として扱われる。近接影とは隣接する構造物や樹木、または設備内の他の太陽光パネル列など、比較的発電設備に近い距離で直接パネルに投影される影のことだ。遠方の地平線影が日の出・日の入り時刻などに影響するのに対し、近接影は日中の時間帯にもパネルの一部を局所的に陰らせ、場合によっては発電出力に大きな損失を与える。PVsystでは3次元の近接影シーンを構築することで、これら近接物による影の影響を詳細にシミュレーションできるようになっている。
具体的には、PVsystの3Dシーンエディタ上で太陽光パネルのレイアウト(配列配置)を再現し、その周囲に建物・樹木・地形の起伏など遮蔽物に相当するオブジェクトを配置する。オブジェクトは直方体や円柱など簡易的な形状で定義でき、大きさ(高さや幅)や位置を実際の寸法に合わせて設定する。例えば発電所の隣に高さ10 m (32.8 ft) の倉庫があれば、その位置に 高さ10 m (32.8 ft) の直方体オブジェクトを置くことで建物の影をモデル化できる。林に囲まれている場合は、外周に高さ15 m (49.2 ft) 程度の壁状オブジェクトや点在する円柱オブジェクトで樹木を表現する、といった具合である。また設備内での隣接架台の影(前後列間の相互影)についても、パネルテーブルを正確に並べれば自動的に計算に含めることができる。
こうしてシーンを構築すれば、PVsystは太陽の位置と各オブジェクトの位置関係から時刻ごとの影のかかり具合を計算する。ソフト上で影の動きをアニメーション表示させることも可能で、どのパネルが何時に影るかを可視的に確認できる。最終的にシミュレーション実行時には、近接影による発電損失量が時間積算されて結果レポートに反映される。結果報告では、年間で影によって失われたエネルギーがkWhと%で表示され、影の影響度合いを数値で把握できる。またPVsystの高度な機能として、影の電気的影響まで評価するモードもある。これは単なる日射量の遮蔽割合だけでなく、影で発生するパネル内部の不均一な発電によるストリング電流の低下(バイパスダイオード動作など)を計算に取り入れるものだ。ただ入門段階では詳細に踏み込む必要はないだろう。重要なのは、PVsystなら遠方・近接それぞれの影響をきめ細かく考慮に入れられるため、


