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SLAS vs RTK:現場でどう使い分ける?

By LRTK Team (Lefixea Inc.)

All-in-One Surveying Device: LRTK Phone

GPSや準天頂衛星などを利用した測位技術は、測量や建設、ドローン、インフラ管理など様々な現場で不可欠な存在です。しかし、通常の単独測位(スタンドアロン)では精度が約 10 m (32.8 ft) 程度に留まるため、高精度化の手法が求められてきました。その解決策として登場したのが、日本の準天頂衛星システム(QZSS)が提供するSLAS(サブメータ級測位補強サービス)と、従来から測位分野で利用されてきたRTK(リアルタイムキネマティック)です。SLASを利用すれば、既存のGPS測位の誤差を補正して概ね 1 m (3.3 ft) 以内の精度を実現できます。一方、RTKを用いれば数センチメートルという桁違いの精度(centimeter-level accuracy, half-inch accuracy)が得られますが、基地局の設置や通信環境など一定の条件が必要となります。


では、実務の現場ではSLASとRTKをどのように使い分ければ良いのでしょうか。本記事では、測量士や建設技術者、自治体職員、ドローン操作者、インフラ管理者といった高精度測位に関心のある実務者に向けて、SLASとRTKの違いを精度・メリット・制約・コストなどの観点から比較し、用途に応じた現場での使い分け方法を具体的に解説します。さらに、センチメートル精度が必要な業務において手軽で確実にRTK測位を実現できる新たな選択肢として、記事の最後でLRTKというソリューションも紹介します。


SLASとは何か?サブメータ級測位補強サービスの概要

SLAS(サブメータ級測位補強サービス)は、準天頂衛星システム「みちびき」が提供する衛星測位の補強サービスです。その名の通り、測位精度をサブメータ級(1 m (3.3 ft) 未満)に高めることを目的としています。通常、単独のGPSやQZSSによる測位では誤差が5〜10 m (16.4〜32.8 ft) 程度発生しますが、SLASを利用することで概ね 0.5〜1 m (1.6〜3.3 ft) 以内の精度に収まる位置情報を得ることが可能です。これは、みちびき衛星から送信される補強信号(L1S信号)によって、測位誤差の主要因である電離圏誤差などを補正することで実現されています。特別な通信回線や地上インフラを必要とせず、上空の衛星から降ってくる補正情報を受信機が取り込むだけで精度向上が図れる点が特徴です。


無料で広域カバーされていることもSLASの大きなメリットです。日本周辺をサービス範囲とし、農業・林業の現場や海上、山間部でも、みちびきの電波が受信できる限り補強情報を得られます。利用にはSLAS対応のGNSS受信機が必要ですが、多くの場合既存のL1帯(1575.42 MHz)対応受信機をファームウェア更新などで対応させることが可能です。つまり、高価な新規設備投資をしなくても、手持ちの機器でSLASを活用できる可能性があります。


もっとも、SLASには限界や注意点もあります。補強情報を受け取るみちびき衛星だけでなく、測位対象のGPS衛星も十分に捕捉できていなければ効果は発揮されません。そのため、高層ビル街の谷間や森林の中など視界が遮られる環境では、SLAS利用時でも位置精度が大きく低下する場合があります。また、SLASが提供するのはあくまでサブメータ級(± 数十 cm (± several in)〜1 m (3.3 ft))の精度であり、精密な寸法管理や境界測量などセンチメートル単位の精度(centimeter-level accuracy, half-inch accuracy)を要する作業には不向きです。さらに時期的な要因では、現在(2020年代中頃)の太陽活動極大期に伴う電離圏攪乱の影響で、SLASの精度が一時的に悪化する現象も報告されています。こうした制約はあるものの、特別な費用負担なしで手軽に測位精度を向上できるSLASは、幅広い分野で利用価値の高い基盤技術と言えます。


なお、みちびきにはSLASよりも更に高精度なCLAS(センチメートル級測位補強サービス)も用意されています。CLASを利用すれば衛星からの補強だけで数 cm (cm level accuracy, half-inch accuracy) の測位も可能ですが、専用の対応受信機(L6帯信号対応)が必要になるため一般のGNSS機器では利用できません。本記事では汎用性の高いSLASと従来型のRTKに焦点を当てて比較しています。


RTKとは何か?リアルタイムキネマティック測位の概要

RTK(Real-Time Kinematic)測位は、リアルタイムにセンチメートル級の位置精度(centimeter-level accuracy, half-inch accuracy)を得ることができる高精度測位手法です。GNSSの搬送波位相を利用し、既知の座標を持つ基地局(リファレンス局)と移動中のローバー局で受信した信号の差分を求めることで、測距に含まれる誤差成分をほぼ完全に打ち消します。その結果、平面位置で約 1〜3 cm (0.4〜1.2 in)、高さ方向でも数 cm (cm level accuracy, half-inch accuracy) 程度の極めて高い精度で、自分の位置をリアルタイムに特定できます。一般的なRTK測位では、初期の固定解(搬送波の整数位相差を解決したFIX解)が数秒〜数十秒程度で得られ、一度「FIX解」が確立すれば、測位点を移動させながらでも継続的にセンチ精度を維持できるのが大きな利点です。測量や土木施工(マシンコントロール)など、精密な位置決めを必要とする現場で広く利用されてきました。


しかしRTKを運用するには、常時利用できる基地局からの補正情報が不可欠です。基地局とは、正確な座標値が予め求められている固定局のGNSS受信機であり、ここで受信した衛星データとローバー側のデータを比較することで誤差を補正します。現場でRTK測位を行うためには、大きく2つの方法があります。1つはローカル基地局方式で、ユーザー自身が現地の既知点に基地局受信機を設置し、無線(特定小電力無線や業務用無線など)で移動局に補正データを送信するやり方です。この方式は比較的シンプルで即時性も高いですが、基地局機器の準備や設置作業が必要なほか、無線通信の電波が届く範囲(一般に数 km〜十数 km 程度)でしか運用できません。また、基地局から離れるにつれて補正精度が徐々に低下し、概ね 10 km 以上 離れると数 cm の精度維持が難しくなるという制約もあります。


もう1つはネットワーク型RTK方式です。こちらは、国土地理院の電子基準点(約 1300 点設置)など複数の基準局データを統合した補正情報を、インターネット経由で取得する方法になります。NtripやVRS(仮想基準点)方式とも呼ばれ、利用者の付近に仮想的な基地局を設定して補正データを配信するため、ユーザー自身が基地局を設営する必要がありません。ネットワーク型では基地局からの距離による精度劣化もほぼ解消され、日本全国で均質なRTK補正サービスを受けられるメリットがあります。ただし、サービス提供会社や地域の基準点網との契約が必要であり、通常は月額・年額の利用料金が発生します。また携帯電話などの通信回線が届かない環境では利用できない点にも注意が必要です。


以上のように、RTK測位はセンチメートル精度という強力な武器を現場にもたらしましたが、そのためには専用の機材通信インフラを整えるコストと手間が避けられません。近年では低価格なGNSS受信機モジュールの普及により、かつて数百万円規模だったRTK機器が大幅に身近になってきました。それでも運用には一定の専門知識が要求され、初めて扱う人にとってハードルが高いのも事実です。さらに、樹木の下や高層建築物に囲まれた環境では電波干渉や遮蔽によってFIX解が得られない(フロート解に留まる=整数未解決で精度が低い)ケースもあり、実際の精度が大きく落ちる場合があります。それでも、必要な環境さえ整えばリアルタイムで数センチの測位を実現できるRTKは、精度重視の業務において欠かせない技術基盤となっています。


SLASとRTKの主な違いの比較

SLASとRTKの特徴を簡単に比較すると、以下のようになります。両者の違いを把握した上で、現場のニーズに合った方式を選択することが重要です。


現場での使い分け事例:SLASが適するケースとRTKが必要なケース

実際の業務では、求められる精度や作業内容に応じてSLASとRTKを使い分けることが重要です。以下に、想定読者である各分野の実務者ごとに、どのような場面でどちらを選ぶべきかを例示します。


測量士(公共測量・用地測量など):基準点測量や境界の確定など、ミリメートル単位の厳密さが要求される測量業務ではRTKが不可欠です。RTKであれば既知点の座標を高精度に定めたり、トータルステーション測量の補助として精度の高いGNSS測位が行えます。一方、測量計画のための現地踏査や予備調査など、精度 1 m (3.3 ft) 程度で十分な段階では、携帯型GNSSでSLASを使っておおよその位置を把握するといった使い方も考えられます。

建設技術者(施工管理・出来形管理など):建設現場では、構造物の位置出し(据付)や重機のマシンガイダンスにRTKが広く用いられています。例えば道路や橋梁の施工において設計通りの位置・高さで施工するには、RTKによるセンチ精度の測位と機械制御が欠かせません。一方、小規模な造成工事の事前調査や埋設物の探索といった場面では、SLAS対応GNSSでおおよその位置を把握し、後日RTKで精密測量を行うという段階的な利用もあり得ます。

自治体職員(インフラ資産の管理・点検など):道路標識や上下水道マンホール、街路灯といったインフラ資産の位置を記録・管理する業務では、必ずしも数 cm の精度は求められません。こうしたGISデータ収集業務では、SLASを活用したGNSS端末(ハンディGNSSやタブレット連携受信機)で数十 cm の誤差に抑えて位置情報を取得することで、十分実用的な成果が得られます。特に予算や専門人材に限りがある自治体にとって、無料のSLASで精度を向上できるメリットは大きいでしょう。ただし、道路境界線の策定や用地測量など法的・技術的に高精度が必須の業務については、専門業者がRTKや光波測距による測量を行う場面となります。

ドローン操作者(空撮・測量など):ドローンによる写真測量やマッピングでは、求める精度によって適切な測位精度が異なります。地形図作成や土量計算など高精度な空中写真測量には、ドローンにRTK受信機を搭載しておくか、地上に既知点(GCP)を設置して精度補正を行う必要があります。一方、広域の被害状況把握や構造物点検のように、おおよその位置情報が付いた空撮写真が得られれば十分な用途では、ドローン内蔵GNSSにSLAS補強が掛かっていればジオタグ精度が向上し、後処理の手間を減らすことにつながります(ただし多くの市販ドローンでは現時点でSLAS補正に対応していない場合もあります)。

インフラ管理者(点検・モニタリング業務など):橋梁やトンネルの変位モニタリング、ダム堤体の沈下計測など、インフラの健全性を精密に測定する用途ではRTKやそれ以上の精度を持つ計測手法が必要です。例えば橋梁の定期点検で橋脚の位置変化をセンチ単位(centimeter-level accuracy, half-inch accuracy)で追跡するならRTKによる高精度GNSS計測が有効でしょう。一方、道路巡回点検で路面の異常位置を記録したり、災害発生直後に被災箇所の位置を概略把握するといったケースでは、SLASで得た 1 m (3.3 ft) 精度程度の位置情報でも現場対応には役立ちます。特に災害時には通信インフラが寸断される恐れがありますが、SLASや後述するCLASであれば通信圏外でも補強信号を受け取れるため、非常時の初動調査に有用です。


センチメートル精度を手軽に:LRTKという新しい選択肢

以上で見てきたように、センチメートル級の精度を得るには従来RTKが必要でしたが、近年では新たなソリューションとして登場したのが「LRTK」です。LRTKは、スマートフォンと連携する小型高精度GNSS受信機で、準天頂衛星みちびきのセンチメートル級補強サービス(CLAS)に対応している点が最大の特徴です。これにより、現場で基地局を設置したり通信網に接続したりしなくても、衛星からの補強信号だけでリアルタイムにセンチメートル級(centimeter-level accuracy, half-inch accuracy)測位を実現できます。いわば「通信に縛られないRTK測位」を可能にするデバイスであり、従来のRTK機材とは一線を画す利便性を備えています。


具体的には、LRTK受信機(重量わずか数百グラム程度)をスマートフォンに装着し、Bluetooth等で接続することで、スマホがそのままセンチメートル精度の測量機器になります。専用アプリを起動すれば即座に補強信号の受信と測位が開始され、得られた高精度の位置データはクラウドに自動保存・共有することも可能です。従来は専門の測量機器と訓練を受けた技術者が必要だった作業も、LRTKを用いれば誰もが直感的に高精度測位を活用できるようになります。実際、建設現場での出来形測定やインフラ点検、災害現場の状況把握などで、LRTKが導入されはじめています。防塵防水や傾斜補正といった機能も備え、過酷な現場環境にも対応できる設計です。


コスト面でも、LRTKはこれまで高額だったRTK測量機材を大幅に低コスト化するポテンシャルがあります。初期投資を抑えられるだけでなく、CLASなど無料の衛星補強を活用することでランニングコストも極めて小さくできます。通信圏外でも測位できるため、リスクヘッジの手段としても有用であり、インフラ維持管理の現場のレジリエンス向上にも寄与するでしょう。スマートフォンを活用した親しみやすいUIにより、専門外の作業員でも扱いやすい点も現場展開を後押ししています。高精度測位の民主化とも言えるLRTKの登場によって、センチメートル精度が必要な業務でも「簡便さと精度」の両立が現実的なものとなってきました。詳しくは[LRTK公式サイト](https://www.lrtk.lefixea.com)も参照してみてください。


なお、LRTKシリーズにはスマホ一体型の「LRTK Phone」や据え置き型の「LRTK Pro2」など複数のモデルがあり、利用シーンに応じて選択できます。例えば 2023 年に発生した能登半島地震の被災地では、通信途絶下でもLRTKがCLASによる測位を継続し、被害状況の測量に大きな力を発揮したと報告されています。こうした実績も相まって、LRTKは今後ますます現場の高精度測位に欠かせない存在となっていくでしょう。


まとめ

SLASとRTKはいずれもGNSS測位の精度向上には欠かせない技術ですが、その特性や必要条件は大きく異なります。現場の要求精度や作業環境に応じて適切な方式を選択することが、効率的で確実な業務遂行につながります。無料で手軽に利用できるSLASは、幅広い場面で「十分な精度」をもたらし、RTKはセンチメートル級が求められる場面で威力を発揮します。さらに近年登場したLRTKのようなソリューションによって、簡便さ高精度の両立も実現しつつあります。それぞれの利点を最大限に活かし、現場で賢く使い分けることで、測位作業の生産性と信頼性を飛躍的に高めることができるでしょう。


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